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【下衆日記】2047/6/30 c

 何がいけなかったんだろう?
 
 全身を駆け巡る悪寒と激痛。
 顔面には渾身の一撃たる上段突きがめり込む。
 そのすぐ下、正中線にキレイに沿った形でもう一方の拳が鳩尾に深々と突き刺さっている。
 これは過剰表現ではなく、感覚がそう告げる事実である。
 僕の感覚は自身の肉体が貫通した事を「僕」に認識させようとする。

 しかしそれはあくまで事実であって現実ではない。
 その証拠に僕は苦痛に悶えながらも死に絶えてはいない。

 それはそうだろう僕の肉体に外見上の損傷は存在していないのだから。

「「衝撃貫通」か。妙な技術を得るのが趣味なのか。そんな技能いくらあっても何の役にも立たないと思うけどな。殺るなら一撃で殺れ」
「戦闘訓練如きで本気出してどうんすんの。大体全てはこいつが悪い」
「あぁ、別に減るわけじゃないし構わないだろ。ほら他人に揉んでもらうと大き――」

 
 何やらガラス片の飛び散るような音が聞こえる。
 今回はモロに脳震盪を起こすような一撃ではなかったため意識を失うヘマこそしなかったが全身を襲う激痛は容易く抑え込めるレベルではない。

「さて、バカも黙らせたしそろそろ寝てよね」
 抑揚のない声で彼女はバックステップで間合いを開け、即座に上段回し蹴りを放つ。
 動きこそ勿論素人のそれだが、今の僕の脳を揺さぶるには十分過ぎる威力である。


 あぁ、この角度からだと良い感じにまる見え……


 だが、この後僕の雑念は即座に取り払われた。
 そしてある種の悲愴感を感じながら、僕は当社比3倍の速度で刃を抜き放つ。
 
 刀の腹を使って彼女の蹴りを真正面から防ぐ。
 当たり前だが、刀での防御は刀身の破壊と同義である。

 刀が根元から真っ二つに折れる。
 足の持つ運動エネルギーをまともに受けた事に加え、日本刀特有の斬る事に特化した形状故の脆さが仇となる結果であった。

 けれど僕の「黒刀」はこの世でただ一つの特別製。
 この刃に劣化や損傷という言葉は意味を持たず、一度抜き放ちさえすれば僕は、勝てる。

 そして、黒い軌跡が空間を侵食した。
 
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【下衆日記】2047/6/30 b

 意識が落ちていく。
 柊雛樹の冷たい視線が突き刺さり、愚息が軽く元気に成りかける。
 しかしそんなことには意も介さず僕の頭の中ではクソ親父のセリフが頭で繰り返されていたのだ。

「ヘマやらかしたら、お前の所有物を全て焼く」

 所有物というのは……つまり。

「ヘマやらかしたら、お前の所有物を全て焼く。問答無用に」

 そんな、いくら親父でも僕のコレクションの尋常ではない量を知っておられるでしょうに。

「お前、色々舐めてるだろ」

 そして僕の意識は焦燥感に駆られ表層へと急浮上した。


 眼前にはセミロングの髪をポニーテールに結びなおす柊雛樹の姿。
「あ、起きたんだ」
「良かったな、あと五秒でアウトだったぞ」
 無機質に言葉を投げるお二人。

「……それは、どうも」
 僕は抜刀し損じた得物を拾い上げる。
 同時に柊雛樹の蹴りが腹部を抉る。
 響いてはならない音が体内に響き、臓腑がめくれ上がるかのような不快感が体中を席巻していく。

「まぁ、特に“待った”も何もない戦闘訓練だしな。手加減しろとも言ってない」

 春柳飛燕の声などどうでもいい。
 だが現状を打開するためには一秒でも早く刀を抜かねばならない。
 しかしその速度を超える速度で繰り出される突きと蹴りのラッシュ。
 抜刀しようにも起点となる右腕を的確に狙われているため反撃の糸口さえ掴めない。

 なら――

 僕は抜刀の構えを解き、両の手を解放する。
 柊雛樹は見事な一足飛びで僕の間合いを侵略し――顔面へ向けた上段突きが放たれた。
 
 瞬間僕は一切の迷いを捨て目標へ向かい手を突き出す。

 思惑通り、僕は彼女の肉体を物理的に侵略することに成功した。
 彼女の拳で視界が閉ざされているとは言え、この感触は本物。
 このやわらかさ、体温、ブラの感触。
 何もかもが僕の妄想通――

 
 メメタァ

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【下衆日記】2047/6/30 a

 拝啓、クソ親父殿。
 今日、僕は死線を彷徨いました。


 片思いの相手である柊雛樹との戦闘訓練。
 言伝は昨日の内に電話で済ませた。半ばキレられながらだったけれど。
 ルールは単純。
 相手からの降参、および意識不明のみが勝敗を決する実に単純なデスマッチ。

 僕達に一体何をさせたいのか。
 訓練場の端で事の発端である春柳飛燕が喪服のような黒スーツ姿で立っている。

 僕の向かいには藍色の髪を揺らしたいつもどおりの彼女。
 服装は何の冗談か学校指定のスカートとシャツである。

 春柳飛燕は訓練場の中央に移動し僕らをそこに呼び寄せた。
「基本的なルールは互いに把握しているな」
「つまり相手を意識失うほどぶっ飛ばすか、土下座させるくらいにビビらせた方が勝ちってことでしょ? その前にこの催しの主旨を述べろ」
「あ、それは僕も……」
「君は黙れ」
「……」
「文句は言うなよ、でなけりゃ物理的に黙らせる。そうだな主旨くらいは説明しておこうか。枝坂は研修の中間査定の一環。雛樹は中級式術士試験の続き」

「「え?」」

「説明は以上だ。制限時間は俺がよしと言うまで。ま、実質無制限だろうな」

 この男はハナから止める気はないらしい。

「得物は事前に申請したものだけ。分かってるな雛樹」
「……」
 彼女は春柳飛燕と眼を合わせようとしない。

「では俺が開始といったら互いにやりあえ」

 深呼吸。
 得物の確認。
 鍔鳴りと共に僕は構えを取る。
 相手との距離は自分の間合いの一歩手前。
 対して相手は徒手空拳。
 最速の踏み込みからの、抜刀。
 刃先は潰してあるとはいえ決まれば決定打は間違いない。
 防御も無意味。
 相手への雑念も捨てた。
 今はこの戦闘を終わらせることが最善。
 
「じゃ、始め」

 
 瞬間、また首に激痛が走った。

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【下衆日記】2047/6/29

「おはよーございます」
 間延びした声で僕は研修先の扉をくぐる。

「おはようございます、枝坂章さん」
「よう、ド変態。今日の分の仕事はお前の机に置いておいたから終わったらすぐ帰れ」
「これで今週分の報告書は全部だ。あとこれが先日の検査結果。侵食率の酷さは相変わらずだが、現在は停滞中。健康に影響が出るほどじゃない。それじゃ、俺は帰る」

 応接。
 罵倒。
 無視。

 三者三様の対応で僕を出迎えてくれた研修先――第七特殊強襲部隊の面々。

 僕は何も言わずにバッグと革製の竹刀袋をいつもの空きスペースに置き、自分の席に着く。
 僕がここに来る理由を詳しく述べるには膨大な字数がかかるので可能な限り短く説明するとこうだ。

 勉強。

 もっと詳しく書くと社会勉強。

 もっともっと詳しく書くと士官のための社会勉強。

 もっともっともーっと詳しく書くと親の都合により勝手に士官の道が決定されていて、ぶっちゃけ九割九分九厘脅されました。お気に入りの人形焼き捨てるとか言われました。いや既に何割かは売り飛ばされたみたいです。どこでそんな知識を得たんだ僕の親。なんで僕がコレクションしてた限定版コレクションフィギュアの「アリスさま」が行きつけの店に展示されているんだよ。おかしいだろ。なぁ、誰か嘘だと言ってくれ。別に嘘だと言ってくれなくてもいい。ただこの現実をどうにかしてくれ。僕の密かな性癖を奪うなよぉ。

「枝坂、追加の仕事」
 
 そんな言葉がたぶん、かけられた。
 いつもこの席に座ると嫌な記憶ばかりが掘り返される。いや、何度考えてもこの現実は受け入れ難い。

「お前のクラスに柊雛樹ってクソガキがいるだろ。あぁ、分からないのなら別に構わない。後で死ぬほど覚え込ませる」

 う~ん、なんか聞き覚えのある名前が聞こえた気がする。

「俺がしても構わないんだが生憎俺とアイツがやり合うと展開が一方的で面白みに欠ける。まぁ、これで察したと思うが戦闘訓練だ。」

 何故だろうフラグが何本もたった気がする。

「お前もそれなりのプロだ。ド素人に負けるなよ」

 え、何。この超展開。

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【下衆日記】2047/6/28

 フラれた。
 二度目となるときっついなぁ。
 でも、諦めない。
 僕の前世雑草だから。

 そうそう。
 僕を保健室送りにしたのは「柊 雛樹」本人ではなくその友人の月城夕音らしい。
 背後から物音一つ立てすに首を、こう、コキッとやったらしい。
 とりあえず彼女は目の前でぐったりしている僕を放っておくのも何だったので保健室まで引きずったらしい。
 彼女曰く「夕音がやらなかったら私が君のナニを再起不能にしてた」

 いやぁ、やっぱり彼女は優しいなぁ。
 そんなに照れなくてもいいのに。

 ふと気付けば今日は金曜日。
 あぁ、明日は例の研修会か。
 憂鬱な気分ってこういうのを言うのかな。

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ゐぬのひと

Author:ゐぬのひと
本が無駄に好きな哺乳類。
東方好きでガノタで似非鍵っ子で現在進行形で厨二病を患っています。
齢二歳


※このブログは本来の趣旨を見失っています。
それでも良いという方はどうぞリンクをしてやってください。
つまりリンクフリーです。

追記:本ブログではスパム対策として“http”を弾いています。
コメントなどつける方はhを抜かしてコメントして下さい。お手数おかけします。

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