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どうか、私が私でありますように(1)

 1

「……うそつき」

 灰色の空と無数に並ぶ墓石の前で私は立ち尽くしていた。
 母が死んだ。
 父が死んだ。
 姉が死んだ。

 数え切れないほどの命がゴミの様に打ち捨てられた。ホント、ゴミみたいに。
 遺体への面会は叶わず、改めて会った家族の姿はこの無機質な墓石だった。

「……ばっかみたい」

 何もかもが嫌になった。泣くにも泣けない。こんなにあっけなく、家族を失ってしまえば悲しみなんて感情は無いのと同じだ。

 けれど、この胸の内に溶岩のように沸々と湧き上がるモノは何だろうか。とろけるように黒々として、どろりとしたこの暗い感情(モノ)は……。
 あぁ、そうか。これが〝憎しみ〟って気持ちなんだ。口元が引きつる。笑っているのだろうか。たぶん笑っているんだ。


 うれしくて

 
 憎みべき対象を私は知っている。恨むべき存在を私は目に焼き付けている。


 たのしくて


 そいつへの復讐の方法を考えて。そいつの無残な最期を想像して。
 私にはできる。私なら可能だ。絶望なんてしない、失望なんてもっての他。 手段は考えた、算段は後からだ。

 今は『力』だ。圧倒的な『力』が必要だ。ヤツを蹂躙し、嬲り、痛めつけ、地獄の竈に相当する苦痛を与えてやる『力』が。
 掌を顔に当て私は笑う。

 ケタケタ、ケタケタと狂ったような笑みを絶やさず、私は誓う。勝つのは私だ。負けるのはオマエだ。この柊(ひいらぎ)雛樹(ひなぎ)がオマエを……


 殺してあげる。


 絶叫が集団墓地に響き渡る。
 そこに眠る13907名の遺体がその誓いを無言で聞き届けた。
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どうか、私が私でありますように(0)

 
 深淵の様相をみせる大海より現れ、闇色の中空を舞う膨大な質量存在。
 月明かりに照らし出され垣間見える表皮は岩肌を思わせるほどに厚く、頑強なものだ。その厳つい表皮が巨体の迫力をより威圧的に見せている。

 巨体がその体躯を海面に叩きつける。

 その際に生じた爆音と白波が辺りの静寂を蹂躙していく様に拡散し、やがて静寂に食い尽くされてしまった。
 巨体は悠々と大海を泳ぎ始めていく。
 自由気ままに、何事もなかったかのように、ただ泳いでいく。
 その周りに浮かぶ小魚の屍骸など無いもののように。

 海は静かで、残酷だ。
 海の生態系は完璧な弱肉強食。
 巨体は強く、屍骸へと至ったヤツらは弱かった。
 ただそれだけ。
 そう、ただそれだけのこと。
 
「         」

 突如、巨体が咆哮した。
 声ですらなく、ましてやそれに宿る意味など皆無であろう。
 それはただの空気の震えでしかない。
 だが、その震えは異様なほど空に響き、彼方へと波及していった。
 
「         」
 
 異質な重低音が吐き出され続ける。その音に意味など無いと分かりきっていてもそれを聞き続けていくうちに妙な感慨のひとつも浮かんでしまう。

 そう、その声ならぬ声はどこか寂しげであり、哭いているように感じたのだ。
 そのような誰彼知らぬ感慨を知ってか知らずか、巨体は歪な独唱を奏で続けていた。
プロフィール

ゐぬのひと

Author:ゐぬのひと
本が無駄に好きな哺乳類。
東方好きでガノタで似非鍵っ子で現在進行形で厨二病を患っています。
齢二歳


※このブログは本来の趣旨を見失っています。
それでも良いという方はどうぞリンクをしてやってください。
つまりリンクフリーです。

追記:本ブログではスパム対策として“http”を弾いています。
コメントなどつける方はhを抜かしてコメントして下さい。お手数おかけします。

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